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P.S.明日のための予習 13歳が20歳になるころには?

親と子の『今を知る特別授業』授業テーマ:環境

前編:親向け授業 「環境に関わる仕事」を理解するために環境問題と企業との関わりを知りましょう

後編:子向け授業 環境を無視して働けない将来のために今から学んでおくべきこと

講義 東京電力株式会社

東京電力株式会社 環境部長 影山嘉宏氏

「環境問題は純粋に地球のことを考えた問題ではなく、人類の存続に都合が良い地球環境を守るためにどうしたらいいかという問題である」―――「13歳が20歳になるころには 3.環境―21世紀のビッグビジネス」のなかで、村上龍氏はこう語っています。
地球環境問題は今や特別なことではなく、一般的な関心事。企業も個人も「環境」を意識せずにいることができない時代となりました。「今後さまざまな予算が環境関連事業に割かれ、環境問題のビジネス化はさらに進んでいくだろう。環境は21世紀に向けてのビッグビジネスになりつつあり、地球環境へ配慮しない企業は淘汰されていく」とも語る村上氏の見解を受けて、世の中の企業は環境問題に今後どう取り組んでいくべきなのか、また、環境に関わる仕事をめざす子どもたちに対してどんなアドバイスをしたらいいのかなどについて、東京電力の環境部長である影山嘉宏氏に聞きました。

東京電力株式会社 環境部長 影山嘉宏氏
東京電力株式会社 環境部長。昭和31年生まれ、静岡県伊東市出身。
1982年東京電力株式会社入社。以降火力発電所及び本店環境部に勤務。1997年〜2001年まで電気事業連合会立地環境部に派遣される。2006年6月から現職となり、環境分野の業務全般を統括している。

(1) 地球環境に配慮のないビジネスは生き残れないと言われていますが、世の中の企業と環境問題との関係は、今後どのように変化していくのでしょうか。

●環境配慮と経済的メリットとのバランスが取れたとき、ビジネスが生まれます

私たちの暮らしが豊かになればなるほど、環境への配慮の必要性が高まります。生きていくためにエネルギーを使い続けることは、地球を食いつぶしていくということです。ご存知のように地球の資源は有限なので、当然問題は深刻化し、より積極的な対応が求められていくでしょう。そういう意味で今や環境問題は他人事でなく、企業も自治体も個人も、それぞれが真剣に取り組んでいかなくてはいけない大切なテーマとなっています。

村上龍氏が言うように、中でも企業については何をするにしても環境への配慮なくしては存続すらできない時代と言ってもいいでしょう。とはいえ、企業は環境問題のことだけを考えてばかりいるわけにもいきません。環境問題を常に意識しつつも、ちゃんとビジネスがバランスよく成立しなくてはならないのです。どんなに環境によい商品やサービスであったとしても、コストとの兼ね合いがうまくいかなければ実際の導入・存続は難しくなります。例えば太陽光発電。理論上はすばらしいものなのですが、あまりにも高コストなためにビジネスとしてはなかなか成立せず、一般社会への普及は進んでいないのが実情です。

つまり、経済的な合理性が成立しなければ、どんなにすばらしい省エネ技術であっても実現するのは難しくなるということです。もったいない話ですね。しかし見方を変えれば、それを扱う企業なり人なりに経済的なメリットがありさえすれば、省エネルギー技術の開発は順調に進むでしょうし、ビジネスとして立派に存続していくことができます。つまり、コスト問題が解決されて経済合理性がバランスよく成立しさえすれば、企業はビジネスとして環境問題に積極的に取り組み、高度な省エネ技術開発を進めていくことができるというわけです。

今後、社会全体として構造を立体的にとらえるしくみ作りが必要になってきますし、地球温暖化や廃棄物処理などの環境問題を解決しうる技術開発をもっともっとしていかなければなりません。そういう意味で、環境がらみのビジネスチャンスはまだまだたくさんあるといえるでしょう。さまざまな分野で環境配慮や技術開発の必要性が生まれるので、環境に関わる仕事自体もまだまだたくさん生まれる見込みがあるのではないでしょうか。

 

(2) 東京電力は、企業として環境問題にどのように取り組んでいるのですか。

●地球温暖化問題への対応を重視し、会社全体として取り組んでいます

日本は過去に大きな公害問題を経験しました。私たち東京電力という会社は、この公害問題と直面したことにより自分たちの責任をはっきりと自覚しました。海、山、森など美しく豊かな自然を持つ日本国土を守らなければならない。貴重であると実感すればするほど、企業として守ってゆかなければという使命感を自覚したのです。そしてその思いは、今もこれからもずっと変わることがない企業の哲学となっています。環境問題への取り組みがこの世の中からなくなることはありません。人々の暮らしが豊かになればなるほど、「もっと環境に重きをおいていかなくてはならない」という自覚をもち続けていきたいと思っています。

CO2排出量・排出原単位の推移

私たちは特に地球温暖化問題への対応を重視し、会社全体として積極的に取り組んでいます。地球温暖化はCO2の発生に関わる部分が多く、エネルギー供給会社の私たちとは切っても切れない関係だからです。電気を作り出すときにはどうしてもCO2が発生します。しかし、だからといって電気を作り出さないわけにはいきません。どんどん伸びる電力需要にこたえながら、いかにCO2を削減していくか。

私たちは「2010年度に90年度比でCO2排出原単位を20%削減する」という自主目標を掲げ、例えば地球温暖化の原因となるCO2や大気汚染の原因となる窒素酸化物NOxや硫黄酸化物SOxを排出しない原子力発電を中心として水力、火力をバランスよく組み合わせた発電を行うなど、「CO2の少ない電気」を作るためのさまざまな対策に取り組んでいます。

*CO2排出原単位とは?
1kWhの電気を使用する際に排出されるCO2の量をCO2排出原単位と言います。各企業が温暖化防止対策の効果を算出する際、計算のもとになっているのも、このCO2排出原単位です。
CO2排出原単位の計算式

3つのE:環境保全、安定供給、効率性

しかし、単にCO2を減らせばよいという簡単な話ではありません。環境に配慮しつつも、安定して電気を供給していくことも大切な使命です。効率のよい発電設備や高圧送電の導入などにより、電気をつくり送る際のロスを低減するなどの努力もしています。また、コスト面での配慮も必要です。人が暮していく上で欠かせないエネルギーである電力のコスト管理を怠ると、必然的に値段が高騰し、社会に大きな影響を与えることになります。つまり私たち東京電力は、「環境保全(Environment)をしながら、安定供給(EnergySecurity)をし、効率性(Efficiency)を追求する」。この3つの要素を同時に達成することこそが大きな使命であると考えます。私たちはこの3つの柱を、「3つのE」と呼んでいます。

「電気をつくる」という側面ばかりでなく、「電気を使う」側面からも取り組んでいます。中でも、高効率機器の開発・普及活動として、オフィスや家庭の給湯・空調分野のエネルギー利用効率向上に大きく貢献する「ヒートポンプ」の拡大をすすめています。世界初の家庭用自然冷媒給湯機「エコキュート」を共同開発しました。こうした機器により、CO2排出量や化石燃料消費量を大幅に削減することができるようになりました。

(3) 環境に関わる仕事をしたいと考える子どもたちにアドバイスをお願いします。

●環境に関わる仕事はどこにいてもできる。大切なのは自分の得意分野を追及すること。

「環境に関わる仕事」とひと口に言っても、そのとらえ方はいろいろあると思います。例えば私自身のことを言いますと、もともと大学院で環境問題について研究をしていたこともあり、東京電力の環境部に配属され今に至っています。自分のやっていることが環境によいことに直結しているという意味でとても幸せだと日々感じていますが、私のように直接的に環境改善に関わる場所で働くことだけが環境に関わる仕事であるとは限りません。

言い方を変えると、どんな業界であっても、どんな仕事であっても、今後はすべて環境問題を意識していかなければいけない時代になってきているということです。すなわち、それぞれの分野で、環境問題を意識しつつ効率をあげていくことが必要な時代になっていくということです。

たとえば、建築技術。どれだけエネルギー効率のよい建物を作り出すことができるか、いかに少ないエネルギーで充分な空調システムを稼働することができるかなど、建築分野が担う役割はとても大きいといえます。ほかにも、環境問題解決に必要な資金を円滑に循環させるための金融構造、環境に配慮するための法律の整備など、あらゆる分野から環境問題に取り組んでいくことができます。

そういう意味で言うと、環境に関わる仕事がしたいからといって環境についての知識を増やす勉強ばかりをするのではなく、自分の得意なことや好きな分野を追求していきながら、幅広い視野をもって物事を見る力をつけていくほうがよいかもしれません。そこからいろいろなきっかけが生まれ、それが地球環境を救うことに結びついていくことになるからです。さらに、社会構造を立体的に理解する視点を養うことも大切ですね。それぞれの仕事がどう社会とからみあっているのか、どう環境に影響を及ぼしているのか。どんな角度からどう働きかければ期待通りの結果につながるのか。社会のしくみがわかっていないと、問題を解決するための広い視野がもてなくなります。

環境に関わる仕事は、どこにいてもできます。大切なのはやはり、これだ!と思うものをみつけ、それを突き詰めていくエネルギーなのではないかと思います。