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もっと教えて!フォーラム
回答・コメントする(No.5313)

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もっと教えて!フォーラム 質問 舞台を主催するためには?

2008/12/24 16:03  bさん[高校生・女]

[Q] ・演劇の公演を行うにはどれくらい費用がかかりますか?
・「○○を上演しよう」ということは誰が決めているのですか?

初めまして。頭っから質問で、失礼します。
以下、この質問に至った事情です。
私はここ数箇月で、演劇に興味を持ちました。
その折、戯曲(古いものです)を読んでいて
「この役を○○さんがやったらきっといいだろう」と、
ぜひそれを見てみたいと思い、
他の人が偶然この配役を実現してくれる可能性も低いので、
「自分でやるしかないだろう」と決めました。

ただ「この芝居をしたい」というのではなく、
「この人にこの役を」ですし、
その方が今プロの方ですし、私は経験もないので、
相当難しいだろうとは分かります。
また、タイムリミットを2014年と考えてます。(若者役なので、俳優さんがあまり年をとられないうちに。)

自分なりに、いくつか方法を考えました。
1.自分で商業演劇を主催(?)する。
  →自分で劇団を作るなどして、客演してもらう。
   ただし…実力差が出て、問題になる可能性が高い。
  →役者さんを一から集めて芝居を作る。
   ただし…金銭的に苦しい。
       そこまで多くの人を集められるとは思えない。
       (役数は17、8程度です。)
 これについて、
 ・演劇の公演を行うにはどれくらい費用がかりますか?
2.他の人に依頼し、やってもらう。
  ただし…依頼する相手がわからない。
 これについて、
 ・「○○を上演しよう」とは、誰が決めているのですか?
3.アマチュア演劇(サークルや市民劇団など)で援助出演(?)してもらう。
  これは市民団体のオペラでプロの方を招いた例があったと
  知り合いに聞きました。
  ただし…やはり実力差が出て問題になる可能性が高い。

最後に、自分の状態について。
現在高校三年で、地方の国立大へ進学を考えています。
志望校に演劇部はありますが学問としては扱っていませんし、
とくに演劇に強いところではないです。
恥ずかしいですが、生の舞台を見たというのも
小学校の集団観劇くらいですし、
中学・高校と演劇部などもなく、経験はないです。
現在は専ら撮影されたもの、雑誌、出版されている戯曲、
を通して芝居に触れている状態です。

質問に関係ないことも書いてしまいましたが、
「何が分かっていなければならないのか」も
把握しきれていないような状態なので、
質問に対することだけでなく、
意見、アドバイスなど頂けたら大変心強いです。
よろしくお願いします。

2009/04/17 07:00  トミオさん[舞台俳優]
[A.4]

はんがんさんのコメントはとても丁寧で現実的で詳しくて、非常に良い解答ですね。もうこれ以上私が余計なコメントをする必要もないのですが、bさんも高校を卒業したころでしょうし、実際に実行可能なプランをひとつ。
まず劇場やチケットぴあ等に行って、bさんが想定している俳優と同レベル(人気、実力、マスコミでの露出度など)の俳優が出演している公演のチラシを出来るだけ沢山集めます。それぞれのチラシの「制作」というところに書かれている会社の名前をピックアップします。それらの会社に片っ端から電話して(チラシに電話番号が書いてなくてもインターネットで検索すればよい)「演劇の制作のお仕事がしたいのですが、アルバイトは募集してませんか?」と聞いてみる。(あるいはインターネットで検索してその会社のホームページがあれば募集の告知があるかもしれません)いきなり入社を希望するのは敷居が高いのでアルバイトが良いでしょう。とにかくある程度のレベルの出演者を扱う現場にもぐりこみましょう。なんとかもぐりこむ事ができたらどんな過酷な現場でも音を上げずに、どんな下働きも厭わずひたすら真面目に働き続けましょう。2014年までひたすら必死に働けば制作助手のアルバイトから制作の社員になれるかもしれません。兎に角仕事上で話ができるプロデューサーや劇場支配人やスポンサーに常日頃から「何某さんに何某の役をやってもらったらいいと思いませんか?」と言い続ける。何はともあれ演劇の制作の現場に入ることができれば実現可能性はグッと高くなるでしょう。


2008/12/28 05:53  bさん[高校生・女]
[A.3]

丁寧なお返事を頂き、本当にありがとうございました。
何を考えたらいいのか、という手掛かりも頂けましたし、
大分突拍子もない発案に誠実なお返事を頂けたことが、
何より嬉しかったです。
役者さんの年齢のことも注意して下さって、
ありがとうございました。
希望が持てましたし、勉強不足も実感しました。
はんがんさんが挙げてくださったことを手掛かりに、
自分ができることを考え、経験を積んでいきたいと思います。
最後に、余計なことかもしれませんが、
はんがんさんのお仕事を応援しております。


[A.2]

一つ書き忘れがありました。

あなたの近くで演劇の公演があるなら、チケットのお値段を調べてみましょう。
例えば、定員500名のホールで全席3000円だとすれば、全席定価で販売できたとして、1舞台150万円の収入があります。1日1回の公演で1週間上演すれば、公演全体では150X7=1050万円になります。
実際には、チケットが完売する事は少ないでしょうし、招待のお客もいるでしょうから、1050万円より収入が少なくなるはずです。実際にどれぐらい少なくなるか予想して(この事をよく「歩留まり」と言います)、この公演の予算はだいたいこれぐらいかな、と推測してみましょう。
あなたは実際にその公演を鑑賞してみましょう。どんな役者さんが何人いて、舞台装置や衣装はどんな感じで、照明や音楽はどんな感じで、パンフレットがどうだったか…。要するに先の1-5を思い出して、それぞれの中身を、わかる範囲で観察してみましょう。そうする事で、その公演の予算の中身が少しずつわかってくるはずです。
これを何回か繰り返すと、いつしか舞台の仕組みが理解できてくるでしょう。あなたが実際に演劇部や市民劇団などに入れば、もっと詳しい事がわかるはずです。そこから先、あなたが夢を実現できるかどうかは、あなたの人並み外れた努力と人柄次第です。


[A.1]

こんにちは。とても楽しいテーマなので、私も一緒に考えてみましょう。ちょっと長くなりますが、頑張って。なお、以下に示す事柄が正しいという保証は全くありません。どこまで正しいかは、ご自分で調べてみてください。

要するにあなたは一つの演目を舞台にかけたいわけですね。そういう事柄を取り仕切る人の役職はたくさんあり、「企画」や「プロデューサー」などが代表的です。実際には微妙に仕事の中身が違うのですが、とりあえず無視しましょう。

演目が決まっているとして、企画するあなたが最低限考えないといけないことは…

1)どこで、どのくらいの間上演するのか?
帝国劇場でするのか、地元の市民ホールでするのか、客席が100もない小劇場でするのか。いくつかの都市を巡回するというケースもあります。また、1回きりの公演なのか、1ヶ月連続でするのか。まずこれを決めないといけません。
→あなたの住んでいる地域にも、演劇ができる施設がきっとあるはずです。もしそこのサイトがあれば、たいてい利用料金の記載がありますから、調べてみましょう。
ただし、この料金はあくまでも「基本料金」です。多くのホールは緞帳を1回上下するだけでも追加料金が加算されます。また、ホールを借りるのは上演期間+前後1日(大道具の仕込みと撤去)+通し稽古1日を、最低見ておく必要があります。

2)出演者はどれくらい必要なのか?
キャスティングは、演劇の出来を左右する大きな要素です。誰かを指定して依頼するのか、オーディションにするのかでも、かかる費用(いわゆるギャラ)は大きく異なります。実績のあるベテラン俳優に依頼するなら、1舞台あたり百万円かかることもあるでしょうし、無名の若手俳優をオーディションするなら1千円でも人は集まるでしょう(ただし、演技力もそれなりです)。なお、舞台稽古にも手当を出す必要がありますが、とりあえず無視しましょう。
→極めて大ざっぱに、主役は1舞台10万円、脇役は5万円、端役は2万円で考えてみましょう。

3)演出や衣装はどうする?
舞台上に椅子一つであれば大道具の費用はかかりませんが、ゴシック建築の大聖堂を作るなら、とてつもなくお金がかかります。衣装も同じですね。特殊な照明を使ったり、スモークをたいたり、立派な音響を使ったりすると、相応のお金がかかります。
→文化祭で演劇をしたことがあるなら、その時を思い出して、どのくらいお金がかかりそうか考えてみましょう。

4)スタッフは何人必要?
脚本・演出・タイムキーパーは絶対に欠かせません。あなたが兼ねてもいいのですが、それでも1人分の給料は必要です。大道具・小道具・衣装・メイク・音響・照明・記録・スケジュール管理…一つの舞台を作るにはたくさんのスタッフが必要です。これらは全てあなたが手配する必要があります。ホール専属のスタッフもいますが、彼らを使うかどうかは、あなたが決めないといけません。
→あなたが思いつく限りのスタッフを書き出してみましょう。あなたの劇に、それぞれ何人ぐらい必要でしょう。その皆さんに2万円/労働1日ずつ給料を支払うと考えましょう。

5)宣伝やパンフレットをどうしよう?
ビラ・チラシ、時には新聞広告なども使って、あなたの舞台を宣伝しないといけません。また、観客の皆さんに配るパンフレットはどうしましょう。A4の白黒コピ−1枚なのか、はたまたフルカラー32ページなのかでも、かかる費用は大きく異なります。パンフレットを有料にしても、最初の印刷費はこちらが払わないといけません。
→知り合いに吹奏楽部員がいれば、演奏会のチラシやパンフレットにどれくらいかかっているか、聞いてみましょう。

6)その他
食事代・交通費・大道具の輸送費用・イベント保険などなど、まだまだお金はかかります。とりあえず、今は無視しましょう。


…あなたが1〜5を考えることができれば、とりあえず必要な予算が見えてくるはずです。もちろん、実際に舞台を打つとなれば、全然違う結果になるはずですが、あなたが今考えたことはけっして無駄にはなりません。
何かとても大きくて難しそうな出来事を考える時、あなたがわかる範囲の事から全体像を推測していくという作業は、あなたの将来にとってとても大切な事です。できる範囲だけでかまわないので、じっくり考えてみましょう。

最後に一つだけ注意します。「若者の役なので俳優が年を取らないうちに…」なんてその俳優さんに言ったら怒られますよ。本当に上手い俳優は、20歳でも60歳を、逆に60歳でも20歳を演じる事ができます(バレエやオペラなどは、その最たるものです)。もちろん年相応というものはありますが、実力のある俳優にとって、自分の実年齢が舞台上の年齢を束縛するようなことはありません。その差をどう乗り越えるかが、役者冥利というものです。