外科研修の一環として，心臓外科をやったことがあります．まぁ下っ端その1で，冠動脈バイパスのグラフトを取る手伝いや静脈瘤の手術をした程度ですけどね・・・．一般病院では，一般外科は手術をやるいろいろな科のお手伝いをすることが多かったので，心臓外科の手伝いもやりました．末梢血管の手術は，やらざるを得ない場合もありました（透析のシャント作りなど）．・・・そんな拙い経験および同業者からの話を総合すると，

1．「心臓外科は季節労働者」：循環器疾患は冬に，しかも夜中や明け方に起こりやすいです．しかも急に起こります．

2．「やっぱり体力勝負」：手術時間はやや長め．胃切除など慣れれば2時間そこそこ，ヘルニアなどは正味15分ですが，どんなに手練れでも大動脈弓部置換を4時間で出来る人はいないんじゃないかな．

3．「成功失敗のメリハリがはっきりしている」：患者さんの回復は劇的です．治るとすごく嬉しいです．でも，手術直接死（術後1ヶ月以内の死亡）が多い部門です．手術がうまくいかないことは，即ち死につながります．私はウン百人（1000人弱？）くらいの手術に執刀あるいは助手として入ったと思うのですが，只一例経験した術中死（table death,要は手術台の上でお亡くなりになった）は，心臓外科の症例でした．この他にも，死には至らずとも重い後遺症が残ったり，病院から出られずにお亡くなりになるケースも全く無いとは言えません（一般外科よりは頻度が高いです．ちなみにこれが関係してか，訴訟件数もやや多いです）．でも，その無念感を補って余りあるほど，手術がうまくいったときの回復は素晴らしいものがあります．

4．「日本の心臓外科医はちょっと多すぎるかも」：アメリカの1/8程度の手術件数しかないのに，アメリカとほぼ同数の心臓外科医がいるという話があります．しかし，昨今の外科離れなどを考えると，あなたが活躍することには事情は変わっているかも知れません．

・・・てなところでしょうか．まだあるかも知れませんが．
心臓外科はどちらかというと個人技の冴えを要求される科ですので，手術がうまければ言うことありません．女医さんはやや少ないですが，いない訳じゃありません．個人的な印象としては，手の小さな女の人は，ああいった手術には向いているのじゃないかと思ったりもしています．

意外と泥臭く体育会系の世界なので，華麗に切って貼って・・・とはすぐにいかないかもしれませんが，やりがいのある仕事だと思いますよ～．

こんにちは。「いまいちどんな仕事か分からない」けど、心臓外科になりたいのだったら、たぶんそれなりのきっかけがあるんだと思います。TVドラマやマンガでそのお仕事を見たとか、知り合いが手術を受けたとか…。まず、その経験をよく思い出してください。そして、自分がそのお仕事の何にひかれたのかを考えてください。その上でもう一度質問してもらえると、もう少しいい回答がもらえるかもしれません。

さて、医師の仕事をこれ以上ないほど乱暴に区分すると、身体にメスを入れることで病気やけがを治したりする医師(外科)と、お薬や身体の調子を整えるための特別な行い(療法)で病気やけがを治したりする医師(内科)の2種類があると言えます。あと、検査・麻酔・病理などもありますが、ここではきれいに省略します。
外科や内科は、特に専門とする身体の部位がある場合、○○外科・△△内科といったふうに、さらに区分することがあり、あなたがご希望の「心臓外科」は、「心臓(とその周辺の臓器)を対象にした外科」ということになります。これまたすごく乱暴に言えば、手術によって心臓の疾病を治療することを専門にする医師のことです。
最近では、医療関係の専門的なドキュメンタリー番組もCS放送を中心に放映されるようになっており、その中では心臓外科が活躍する場面もあります。ショッキングな映像が多いので積極的にお勧めはしませんが、機会があれば視聴してみると、いろんなことが分かると思います。