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13hw編集部 シリーズ特集 この国の“仕事選び”が変わりはじめている 第1弾 113万部のベストセラー「13歳のハローワーク」を考える


“好きなことを仕事として考える”という作家村上龍氏のメッセージが大きな反響を呼んだ書籍「13歳のハローワーク」。一昨年の11月の初版から約2年が経ち、その間に全国8,000校以上の小・中・高等学校で教材や参考図書として採用されました。また、発行部数は留まることなく、ついに113万部を越えました。(2005年11月現在)

なぜ、この本が、こんなにも売れ続けているのでしょうか?何が、読者の心をとらえ続けているのでしょうか?今回の特集では、読者から寄せられた「声」をご紹介しながら、日本の仕事選びが従来のそれと少しづつ変わり始めていることを考えてみたいと思います。是非、みなさんのご意見も編集部までお寄せ下さい。(13hw編集部)




(1)どんな人が「13歳のハローワーク」を読んだの?

「13歳のハローワーク」の読者から寄せられた、約2000枚の読者からのアンケートハガキ(以下読者ハガキ)を調査・分析しました。(調査では、書籍購入者と読者とは必ずしも一致しないことを前提にしています。)

読者ハガキは、最年少8歳の男の子から、最高齢90歳の女性まで、幅広い年代の方々から寄せられています。
「13歳が読むには難しすぎないか?」という感想を持った方も多いと思いますが、実際には、読者ハガキの全体の半分が20歳未満の子どもたちからのものです。しかも、他のどの年代のコメントよりも、10代の読者ハガキにはびっしりとコメントが書かれており、自分の将来や仕事選びについて真剣に考え、そして不安を抱いている様子がうかがえます。
また、女性、特に子供をもつ母親からも多く読者ハガキが寄せられています。将来や仕事のことを子どもたちへ教えるための、ひとつの参考図書になっているようです。(13hw編集部より)

『13歳のハローワーク』読者層(読者ハガキ集計より)

『13歳のハローワーク』読者層

(2)「13歳のハローワーク」に寄せられた声!

著名人から寄せられたこの本の推薦コメントと、一般の方からのコメントを、年代別にしてご紹介します。

大人たちの感想には、‘親’としての視点、そして‘自分’としての視点の両方があります。親として自分たちが過ごしてきた時代を振り返り、子供たちには従来とは違った視点での仕事の選び方が必要ではないか?と考えている姿が浮かび上がります。(13hw編集部より)

著名人より ~推薦コメント~

全く新しいアプローチで働くことをとらえている。人生にとっての仕事の意味が変わる革命的な一冊だ。

作家/東京都知事 石原慎太郎

困難な時に、この本に出会えるかどうかは、その子の一生を決定するだろう。この本に出会えた子は幸運だ。

音楽家 坂本龍一

ページをめくると、学校の通知表には出てこない「能力」が次々に登場する。 そして「働くことって面白い!」と、おとなも子どもも夢中になる。この本は、世界で一番リアルなファンタジーだ。

作家 重松清

毎日毎日この本をひらいています。色んな仕事がとても新鮮で、読んでいるだけで、モチベーションがぐんぐん上がっていきます。

女優 石田ゆり子

初めて手にしたとき、これだと思った。多くの悲劇が起きている現在、社会に何が必要か考え抜かれた答えが現れている。虚しさを超えて生きるための、具体的な言葉に出会えるこの本は、最高の文学でもあると信じている。

作家 天童荒太

自分は何をしたいのか。誰もがつねに問い続けている。学生や社会人、人生をやり直したい人、結婚・出産・家庭の岐路で悩む女性・・・・すべてに、こんなにも多くの選択肢があるのだと教えてくれる。

フリーアナウンサー 八塩圭子

「自分は一生それをやってワクワクして過ごせるものがきっとあるはずだ」そう思っていないと出会えない。

「13歳のハローワーク」著者・村上龍氏

公式サイトオープンによせて インタビューを読む

読者ハガキより ~年代・内容別コメント~

[将来を考え始めた小中学生の声]

将来を考え始めた小中学生の声

本当にいろいろな仕事がいっぱい書いてあって「すごい!こんなにたくさんの仕事があったんだなぁ」とびっくりしました。家族みんなで読んでいます!(11歳・小学生)


学校の先生や塾の先生はいい学校に行きなさいなんて言っても、必ずしも大金持ちになれるわけではないと思った。私はこの本をみてとても楽しい気分になった。(12歳・小学生)


わたしは、NGOや国連や養護学校の先生みたいな、困っている子どもの役に立てる仕事をしたいと思いました。(12歳・小学生)


国語辞典のように堅苦しくなく、未来への想像がパンク寸前までふくらみました。(13歳・中学生)


どんな職業でも、一つ一つが重要な役割を果たしているんだなと思った。(14歳・中学生)


普通のことに興味が持てなくてずっと悩んでいましたが“何も好きなことがないとがっかりした子のための特別編”をみると、ぜんぶ私にあてはまっていて、涙がすごく出てきました。私はその時、ホッとしたんだともいます。(14歳・中学生)

[進路選択になやむ高校・大学生の声]

本を開いてみて驚きました。興味をもっていた分野はもちろん、今まで知らなかった職業まで「やってみたい」と思えたのです。514も職業がのっているのに説明が丁寧で、大雑把にまとめた職業ガイドとは全く違ったものだと感じました。(16歳・高校生)


19歳になった今でも進路のことを悩んでいます。13歳のみならず、私たち大学生が読んでも得るものがたくさんあります。自分にとって、ベストな職業とは何なのか?今も模索中です。(19歳・大学生)


正直でフェアで具体的でリアル。就職活動の真っ最中に働くということについて改めて考えるきっかけができて、本当に刺激的でワクワクしました。言い訳をせずに、自分の好きなことを目指したいと思います。(22歳・大学生)

[親としての大人たちの声]

親としての大人たちの声

4年生の男の子ですが、自分が今得意とするもので、将来どのような職業として社会で通用できるのかを知る機会を得たようです。これから成長とともに変化もあるでしょうが、自分で考えるチャンスができたことをうれしく思います。(35歳・主婦)


子供に上手く説明するのが難しいと思っていたことすべてが、この1冊で解消です。(36歳・会社員)


“幸せ”だと子供が感じられる人生が送れるよう、“好き”を一番大切に人生を自身の力で選び取っていってくれればと思います。とても分かりやすく書いてあり、学校で進路指導の一部として扱ってほしいなと思いました。(44歳・会社員)


本を読むのがきらいな息子も喜んでページをめくっていました。「パチプロって仕事なの?」と、なんだかがっかりするような質問を受けながらも、食卓の話題が増えました。(44歳・パート)

子供たちが自分の経験の中で考えられることはごく狭い範囲のことですし、親が語れることもわずかです。子供にとっても、自分自身を見つめることができる大きな手がかりになることと思います。(46歳・主婦)


子供の心に向き合って、彼らが本当になりたい職業につけるようサポートできれば、こんなにうれしいことはありません。親の心のビタミン剤のような、すばらしい本でした。(46歳・主婦・女)


この本は子供の就職に悩む親たちが読むと、心が落ち着くという一面もあるように感じました。(49歳・主婦・女)

[自分としての大人たちの声]

なんとなく流れに逆らわずOLから主婦へ、という人生を歩んでいます。だからこそ子供たちには夢を持って、やりたいことを仕事に選んで、充実した人生を歩んで欲しいと思うのです。(30歳・主婦)


この本のページをめくるごとに、内からわき起こるエネルギーなるものを感じています。36歳の専業主婦の私にもう一度何かを始めるチャンスが訪れたようです。(36歳・主婦)


社会人として働いて15年。一度も「楽しく仕事をした」という経験がありません。残りの人生、是非とも働くことの楽しさを味わってみたいのです。大人が自分の生き方を見つめなおすのにもぴったりの本だと思います。(38歳・団体職員)


私の方が夢中になって読んでいます。私も自分探しをやめたわけではありません。(44歳・パート)


[先生・教育に携わる人たちの声]

教材としてまとめて購入しました。中学校教諭です。中学校道徳・総合的な学習でリンクさせながら活用しました。様々なアプローチができ、生徒も興味をもって読んでいました。(29歳・中学校教諭)


もっと若い世代からのキャリア形成の必要性を痛感していました。(55歳・キャリアカウンセラー)


採用の仕事をしているので、学生とともに学べたらと思い会社で購入し、訪問してくる大学生と一緒に見ています。単なる窓口で事務的に訪問者を扱うのではない採用担当官を目指しているので、エールをいただいたようで励みになりました。(46歳・会社員)

(3)期待と不安、この国の “ 仕事選び ” はどう変わっていくのか

村上龍氏の言葉をかりれば、『13歳のハローワーク』は案外毒を含んでいる本です。 たとえば、「13歳のハローワーク」のアマゾン(amazon.co.jp)におけるレビューには、「社会はそんな甘いものではない」「現実を無視したことを言うな」といった批判も多く寄せられています。また、アナリストの三浦展氏の著書「下層社会」(光文社新書)では、独自の調査をもとに「村上龍の『13歳のハローワーク』を読んで、そうだ、自分が本当に好きなことを見つけてそれを仕事にしようと真に受けて自分探しを始めた若者は、結果としていつまでもフリーターを続けて、30歳になっても低所得に固定化されていく危険性が高いかもしれない」という仮説をたてています。

そういった批判もありながらも、この本が多くの方々に支持されているのは、 「子どもには、お金もそんなに儲けなくていいし、偉くなってくれなくてもいいから、いきいきとしていてほしい。それをやるのが楽しくてしようがないという子ども姿を見たい。 」という村上龍氏の想いが、子どもたちや、その親に確実なメッセージとして伝わっているからではないでしょうか?

このシリーズ特集では、「この国の”仕事選び”が変わりはじめている」をテーマに、13hw編集部が独自の視点で、現代の仕事選びが今どう変わりつつあるのか、様々な取り組みをご紹介していく予定です。是非、あなたのご意見や、取り上げて欲しいテーマなどを、13hw編集部までお寄せ下さい。

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