プラントハンター
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オレンジやレモンは北西ヨーロッパの貴族にとってあこがれの樹木だった。イタリアやスペインからアルプスを越えて運ばれ、夏の間だけ北西ヨーロッパの貴族の庭を彩った。イギリス人が、ヨーロッパ大陸に派遣され、サクランボやオレンジ、アネモネ、チューリップなどを購入したのが、プラントハンティングの起源だといわれている。そして、19世紀の欧州から、アジアやアフリカや中南米、カリブ海へ珍しい花と木々を求めて旅立った人たちのことをプラントハンターと呼ぶようになった。最初は修道士だったり、または犯罪者だったりしたが、本国の王族や貴族のエキゾチックな要求に応えるべく、はるか未開の地に足を踏み入れ、さまざまな方法で花の種や苗を持ち帰った。やがてプラントハンターは一種の事業となり、組織的に運営されるようになって、植物学者が採集を担当するようになる。そうやって世界各地からイギリスをはじめとする欧州へ持ち込まれた植物は1万種とも10万種ともいわれている。今ではもちろんプラントハンターといわれる仕事・職業は存在しない。しかし、プラントハンターは、「仕事」や「職業」の本質をいろいろな意味で象徴している。あるモノを、原産地から、それを欲しがる人が大勢いるところへ運ぶと利益が生じる。珍しいもの、希少なものを取引すると、莫大な利益を生むことがある。誰もやっていないことをやると利益が大きいが、そのリスクもまた大きい。富と名声を得た少数のプラントハンターの陰には、本国を遠く離れた危険な未開の国で命を落とした大勢のプラントハンターがいたはずだ。ほかの大多数の人と同じことを同じようにやっても大きく成功する可能性は低いということを、プラントハンターという仕事は示している。
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