劇団員
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さまざまな演劇の劇団に所属する人のこと。おもに俳優だが、照明や美術、大道具や切符切りなど裏方もいる。劇団四季のようなメジャーな劇団に所属している人は「私は劇団員です」とは自己紹介せずに、「劇団四季です」と名乗ることだろう。大正時代から昭和初期には劇団員と呼ばれる職業はインテリの代名詞だった。劇団に属しているというだけで、当時の治安警察ににらまれることもあった。その前は、劇団員は近代の象徴だった時期もある。江戸時代には、旅回りの芝居の一座とか、歌舞伎の一門だけがあって、近代演劇の「劇団」はなかったからだ。
60年代後半のカウンターカルチャー(反体制文化)花盛りの時期には、アングラ劇団というものが生まれたりしたが、その後、劇団そのものも、劇団員という呼び名も、しだいにマイナーなものになっていく。先鋭的で実験的な小規模の演劇というのは、基本的に近代化途上・激動期の社会のもので、成熟期においては不要となる。成熟期の演劇は、より洗練され、商業的なものにならざるを得ない。現代社会は、先鋭的な演劇を基本的に必要としていない。だが、劇団の数は異様なほど多いし、劇団員になろうという若者は後を絶たない。
それは、今の日本のような過渡期の社会では、「何をすればいいのかわからない」若者が多く発生し、充実感のある仕事を探すのが簡単ではないからだ。その演劇の質にかかわらず、仲間たちとともに稽古に汗を流しながら、1つの公演をやり遂げれば、とりあえずの充実感があるだろう。だがほとんどの場合、外部からの批判がなく、金銭がからむ興行的なリスクもないために、文化祭や学園祭やお祭りなどをやり終えたときの充実感と大して変わりがない。現代の劇団員のなかには、単に無意味な苦労をしているだけなのに、それを充実感だと思い違いしている若者も少なくない。商業主義とはまったく無縁の劇団に入るのは簡単で、電話をして、「そちらの劇団に入りたいんですが」といえばそれでOKという場合もある。ただ、劇団からの報酬はない。しかし、実は、劇団員のリスクは報酬がもらえないことではない。アルバイトをしながら劇団員を続ける若者が負うリスクとは、現実の社会で生きていくための、知識やスキルや人的ネットワークを得ることが非常にむずかしいということだ。閉鎖的な集団における自己満足には、警戒が必要である。
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