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P.S.明日のための予習 13歳が20歳になるころには? IT[Information Technology]


ITビジネスは、まるでかつての重工業と同じように雇用を創出すると期待されている。しかし、いまだ変化の途上にあるITビジネスの未来を、旧来の文脈から予測するのはむずかしい。ここでは2つのインタビューを通して、ITビジネスの現在を確かめ、今後の可能性を探る。




1. はじめに(コンピュータの誕生)

1-1 コンピュータの誕生

現在のコンピュータの基本となるものは、1945年、ハンガリー出身のアメリカの数学者、ジョン・フォン・ノイマンによって提唱された。日本語では「電子計算機」と翻訳されていたが、その基本は「計算のための機械」だった。創生期の「電子計算機」は、オッペンハイマーらが行ったアメリカの国家プロジェクト「マンハッタン計画(原子爆弾開発)」において、核分裂反応の計算にも使われた。ENIACと呼ばれた世界最初の電子式コンピュータは、長さ約24メートル、高さ約2メートル、幅約1・5メートルという巨大なもので、2万本近い真空管が使われ、6000個のスイッチがあり、パーツと電源と冷却装置を合わせると30トン以上の重さがあった。しかも、プログラミングを変えるたびに、スイッチをセットし直し、ケーブルを差し替えなければならなかった。

1-2 ハードウェアとソフトウェア

ハードウェアとソフトウェア

計算装置であるコンピュータは、「命令」のための「言語」を必要として、その言語のことをプログラムと呼ぶ。ENIACは、実際にスイッチを入れたり切ったりして、また回路の配線を差し替えることで、プログラムの変更をしていたが、フォン・ノイマンのグループは、プログラムをコンピュータの内部に組み込み、独立させることに成功した。複数のプログラムをデータとしてコンピュータ内部に「収納」しておいて、瞬時にそれらの切り替えができるようにした。コンピュータは、大きくハードウェアとソフトウェアに分かれるわけだが、フォン・ノイマンのグループによって、ソフトウェアという概念が生まれたことになる。

ハードウェアとは、CPUという中央演算装置や、メモリなどのコンピュータ本体、それとディスプレーモニターやプリンタなどの出力装置・周辺機器を指す。ソフトウェアとは、もともとコンピュータを有効に動かすためのプログラムを意味していたが、現在では映像、画像や音楽ソフトなど多くの応用技術全体を指すようになった。シリコンの上に集積回路を焼きつける技術や、さまざまな「命令言語」の開発など、ハードウェア、ソフトウェアの両方が進化する中で、コンピュータは急速に小型軽量化し、最初の家庭用コンピュータは1975年に開発されている。

1-3 インターネットの登場

インターネットの登場

だが、コンピュータが広く一般に普及するのは、90年代にインターネットが登場してからだ。もともとインターネットは、アメリカ国防総省が中心になって開発した軍事用通信技術だった。戦争でも破壊されにくい通信手段として、指令・管理中枢のないコンピュータネットワークが考案され、インターネットの原型が生まれた。

やがて旧ソ連が崩壊し、東西冷戦が終結すると、軍事目的で開発された技術が民間に転用されるようになる。すでに大学や研究機関などで利用され始めていたインターネットは民間に開放された。格段に使いやすくなったパーソナルコンピュータが、インターネットによって、国境を超えて世界的に結ばれ、電子メールを送ったり、個人や企業や政府機関などのデータを閲覧できる環境が生まれた。パソコンさえあれば、個人が世界に向けて情報を発信できて、世界中から情報を入手できるようになったのである。

この画期的なメディアは、爆発的に普及した。そういった状況で、IT(インフォメーション・テクノロジーの略)という言葉が登場する。情報通信に関する技術全般を指すものだが、コンピュータとインターネットを中心に、新しい技術が新しい産業と社会を生むのではないかという期待が込められた言葉だった。

1-4 ITの将来

ITによって、電子メールやネットショッピングやインターネット金融取引など、さまざまな新しいサービスが生まれた。パソコンだけではなく、携帯電話はもちろん、カーナビやテレビなどの家電を情報端末としてとらえたビジネスも始まっている。これまでIT関係の仕事といえば、システムエンジニアなどの技術者を指すことが多かった。しかし、ITの世界では、その進歩が急激なために、今後どのようなビジネスが生まれ、どのように社会を変え、そこからまたどのような職業が生まれるのか、予測するのは非常にむずかしい。新しい技術があっという間に陳腐化し、ビジネスモデルが常に変化する。現在IT界を支配している巨大企業でも、10年後に生き残れるかどうかわからない。

1-5 ITを理解するための2つの対談

ITおよびインターネットの現状を理解するために、最前線で仕事をするお2人に話を聞き、それを対談の形で載せる。対談の形で紹介することにしたのは、ITとインターネットが、今現在、変化を続けている分野で、現場の生の声をそのまま紹介したほうがリアルだと思ったからだ。伊藤穣一氏は、日本で初めてインターネットのホームページを作った人である。わたしが知る限り、インターネットとITの本質と可能性を、日本でもっともよく知る人物だ。2人目の高島宏平氏は、4年前に、26歳の若さで、「より安全な食品」のインターネット販売会社を作り、新しいビジネスモデルとして成功させた。現在のインターネットビジネスの先端的な部分をうかがい知ることができると思う。

村上龍



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